乾式対応システム(アンモニア注入システム・乾式電気集じん装置)

乾式対応システム

ボイラ燃料中に含まれる硫黄分の一部が炉内でSO3ガスとなり、それが冷却されると凝縮し水分と結合して硫酸ミスト(SO3ミスト)という微細な粒子を形成すると、排煙系統に設置される集じん装置などの機器や煙道の腐蝕の深刻な原因となる可能性があります。

それに対する解決策として、三菱重工業株式会社が世界に先駆けて、煙道へのアンモニア注入システムを開発し、三菱重工パワー環境ソリューション株式会社がその技術を継承しています。このシステムでは、煙道にアンモニア希釈ガスを注入し、煙道中でSO3と完全反応させて硫酸アンモニウム(NH4)2SO4という安定した固体粒子を生成させ、これを乾式電気集じん装置にてボイラダストと一緒に捕集します。SO3ガスが冷却されてSO3ミストを生成する前の高温の状態で、アンモニアガスとSO3ガスを反応させて、腐食に対して無害化します。反応性生物である固体粒子は、乾式電気集じん装置によって排ガス中から除去されるので、SO3ミストによる「紫煙」排出の問題も解決されます。

このシステムは、日本のほとんどの電力会社における油焚の火力発電所で採用され、好評を頂いております。

アンモニア注入フロー

特徴

  • EPの低温腐食防止ならびに紫煙の防止を図ることが可能。
  • ガス混合器によりガス中SO3濃度及び温度を均一化させ、NH3注入量の無駄を少なくする。
  • 閉塞の発生しないノズルを使用し、万一閉塞した場合でも蒸気によるノズルパージが可能。
  • ボイラ負荷に応じたアンモニアの適性制御を実施。

アンモニア注入時の乾式電気集じん装置・灰処理装置への考慮点

アンモニア注入システムは、アンモニアガスとSO3ガスが反応して生成される硫酸アンモニウムの固体粒子を、下流に設置された乾式電気集じん装置で捕集するので、乾式電気集じん装置との組み合せで適用することが必須です。

アンモニア注入によって生成する硫酸アンモニウム(NH4)2SO4は、非常に安定した固体粒子であり、乾式電気集じん装置での集じんは比較的容易ですが、SO3ガスの濃度の変動や、その他の条件により、SO3ガスの全てが完全には硫酸アンモニウムとならず、一部が酸性硫酸アンモニウム(NH4)2HSO4と呼ばれる物質などから成る中間生成物となってしまう場合があり、こうした中間生成物は、潮解性が高く、しばしば乾式電気集じん装置内で、電極に付着して成長したり、固化して塊を形成して、電気集じん装置の荷電を阻害したり、またホッパ内で灰の流動性を低下させて、ホッパから灰処理装置への灰の排出を阻害したりする場合があります。

特に、重質油などの硫黄分が非常に高い燃料を使用する場合には、生成する硫酸アンモニウム量も高く、同時に好ましくない中間生成物が形成されてしまう可能性も高く、プラントを安定して長期連続運転することが困難となる場合もあります。このため、重質油などの硫黄分が非常に高い燃料を使用するプラントでアンモニア注入システムを採用する場合には、乾式電気集じん装置や灰処理装置における種々の配慮が必要となります。

三菱重工パワー環境ソリューション株式会社の乾式電気集じん装置は、こうした取り扱いが難しい粒子の捕集においても、常に高い槌打力を高い信頼性をもって保持することが可能であり、さらに、豊富な経験に裏付けられたノウハウを活用して、最も適切な槌打スケジュールや荷電制御を計画することにより、安定した荷電状態を保持することが可能です。

乾式電気集じん装置の詳細

また、重質油などの高硫黄燃料に起因する流動性の悪い灰をホッパからスムーズに排出するために、灰処理装置の運転に連動してホッパ内壁面にパルス・エアを噴霧するシステムを実用化し、プラントの安定した長期連続運転に貢献しています。

さらに、三菱重工パワー環境ソリューション株式会社では、電気集じん装置とともに長年取り組んできた灰処理装置に対する長年の経験に基づき、こうした重質油などの高硫黄燃料に起因する流動性の悪い灰を安定して輸送する真空式の灰処理装置も計画・供給し、併せてプラントの安定した長期連続運転に貢献しています。

アッシュビン外観
灰処理装置(電気集じん装置ホッパ下)