重質油使用時の問題点

ボイラの燃料には多かれ少なかれ硫黄分が含まれています。その燃料をボイラで燃焼させると、硫黄分は炉内で酸化し大部分は亜硫酸(SO2)ガスとなりますが、その一部はさらに酸化が進んで無水硫酸(SO3)ガスに転化されます。最近は、重質油などの硫黄分の高い燃料が用いられる場合が増えており、SO3の発生量が増えて、次のような問題点が生じています。

排煙系統に設置される集じん装置などの機器や煙道の腐食発生

  • SO3ガスは、200度程度の温度域で排ガス中の水分と反応して硫酸(H2SO4)となり、排煙系統内で冷却されると硫酸ミスト(SO3ミスト)となります。
  • SO3ミストは凝縮された硫酸分であり、石炭を燃料とする場合には、SO3ミストは大量の石炭灰に「まぶされ」るので、一部の米国炭などの著しく高い硫黄含有量を有する場合を除くと、腐蝕が問題となることはほとんどありませんが、油などの灰分の少ない燃料を用いる場合には、まぶされる「灰」が少ないために、しばしば腐蝕の原因となります。
  • 重質油(残渣油・アスファルト・石油コークスなどを含む)のような非常に硫黄分の多い燃料を使用する場合には、発生するSO3も多いため、SO3による腐蝕は特に深刻な問題となり得ます。

「紫煙」の排出による景観上の問題

  • SO3ミストは気相で析出する非常に微細な粒子であるため、例えば排煙脱硫装置を設置してもほとんど捕集されずに、大部分がそのまますり抜けて煙突から「紫煙」(注)として放出されてしまいます。
  • この「紫煙」は、粒径が小さいために煙突から大気に放出された後もなかなか拡散せずに、いつまでもたなびいて非常に目立つために、最近では景観上問題となるケースも増えており、可視煙の低減を目的とした対策が求められるケースも増えています。

    (注)紫煙とは?
    「紫煙」とは、煙草に火をつけて灰皿の上に置いておき、煙が立ち昇ると、光線の具合によってはその煙の色が少し青っぽく見えますが、このときの煙草の煙の粒径がサブミクロン(0.1マイクロメートル~1マイクロメートル)の非常に微細な領域に有り、光の散乱の関係で青っぽい色に見えるもので、このためにしばしば煙草の煙のことを紫煙と呼びます。ちなみに、煙草を吸った後で口から出てくる煙は、紫煙というよりはもう少し白っぽく見えますが、これは体内で凝集するために粒径が大きくなるためです。
    工場のボイラなどの煙突から排出されるガスの中に含まれるSO3ミストもまた、ちょうど灰皿上の煙草の煙と同じサブミクロンの粒径であり、光の散乱の関係で青っぽい煙として見えるために、しばしば煙草の煙と同様に「紫煙」と呼ばれています。