湿式対応システム(溶解塩噴霧システム・湿式電気集じん装置)

湿式電気集じん装置(EP)の適用

硫黄分の高い燃料を使用する場合、SOx規制をクリアするために排煙脱硫装置の設置が必須となりますが、微細なSO3ミストの粒子は脱硫装置をすり抜けて、そのままでは紫煙として煙突から排出されてしまうので、脱硫装置の後流に、SO3の微細な粒子を捕集することを目的として、湿式電気集じん装置を設置するという方法があります。これは、アンモニア注入システムを適用した乾式のSO3対策(腐食防止・紫煙対策)と並ぶ、もう一つの有効な対策です。

  • 湿式EPは、排ガス中のダストやミストを静電気力によって集じん板上に形成された液膜に捕集し、液膜ごと洗い流します。
  • 捕集粒子の二次飛散が少ないため非常に高い集じん性能が得られ、SO3ミストのような非常に微細な粒子も効率良く捕集することができます。
  • アルカリ液を噴霧することにより、捕集したSO3(H2SO4)による腐食を防止します。

湿式電気集じん装置の詳細

脱硫装置の後流に設置する湿式EPは、三菱重工業株式会社が世界に先駆けて実用化し、国内初号機(1975年)納入以来現在に至るまでお客さまの好評を得ており、三菱重工パワー環境ソリューション株式会社がその技術を継承しています。また、海外向けの初号機として1997年にオーストリアの油焚ボイラ向けに納めておりますが、これは(地元欧州メーカーなど他社も含めて)欧州初の紫煙対策を目的として設置された湿式電気集じん装置であり、現在も順調に稼動して好評を得ています。

最近では日本でも規制化の動きが出てきておりますが、米国など海外において先行しているPM2.5やHAPsに対する規制強化の動きに伴い、紫煙対策で実績のある高性能の集じん装置として、湿式電気集じん装置に対する関心が、世界的に高まっています。

溶解塩噴霧システム

溶解塩噴霧システムは、社団法人 日本産業機械工業会(後援 経済産業省)による2008年の第34回優秀環境装置表彰事業において、日本産業機械工業会会長賞を受賞しました。

システムの概要

  • 近年用いられる硫黄分が特に高い重質油を燃料とする場合には、湿式電気集じん装置のみで対応できるSO3濃度を超えるようなケースも出てきました。
  • そのようなケースでは、アンモニア注入システムを用いた乾式対応においても、反応生成物である硫酸アンモニウムとボイラ煤じんの混合物の廃棄物処理の増加と乾式電気集じん装置の維持管理が煩雑で、コストが掛かる等の問題がクローズアップされています。
  • これらの問題を解決するために新たなSO3除去システムとして開発されたのが、脱硫装置上流の煙道に脱硫装置の排水に含まれる高い濃度の溶解性塩類(Na、Mg分)を微細噴霧する「溶解塩噴霧システム」です。
  • 溶解塩噴霧システムは、脱硫装置との組み合せにおいて、単独のSO3除去装置として機能することが可能です。
  • また、煙突出口での要求性能によっては、脱硫装置出口にさらに湿式電気集じん装置を設置して組み合わせることも可能です。

システムのイメージ

  • 脱硫装置上流の煙道に噴霧された溶解性塩類は、排ガスの熱により乾燥固化する過程において、SO3分を除去します。
  • 乾燥固化した塩類固形分は、SO3(硫酸分)を含んだ状態で脱硫装置に入り脱硫装置の循環液との接触によりガス中から除去されます。
  • 除去された硫酸分を含む溶解塩(固形物)は、溶解性であるために脱硫装置の吸収循環液に再溶解し、硫酸分は、脱硫装置の中和薬剤で中和されます。

システムの特長

  1. 塩濃度が高い溶液を脱硫装置入口で、微細液滴として噴霧するだけで高濃度のSO3が安定して除去可能。
  2. 入口SO2濃度に影響されることなく、安定したSO3除去性能が得られます。
  3. 水酸化ナトリウム(Na)法、水酸化マグネシウム(Mg)法の脱硫排水(Na2SO4、MgSO4等)があれば、従来のNH3注入システムと異なり、特別な薬剤を必要としません。
  4. SO3成分を脱硫装置の副生物と同等(Na法やMg法排煙脱硫装置の場合、Na2SO4、MgSO4の溶解塩として排水に含有し放流排水が可能)とすることが出来るため、NH3注入システム導入時に考慮しなければならない、特別な灰処理(NH3成分を考慮した廃棄物処理)・排水処理(脱硫排水中に混入されるN分の処理)などの付帯設備が不要となり、系外への廃棄物の低減が達成されると共に運転費が大巾に軽減されます。
  5. 煙突出口での煤じん濃度やSO3濃度を制御する設備として湿式EPを設置。溶解塩システムとの組合せにより、湿式EPの小型化及び出口SO3の大幅低減が可能。
  6. 主要部品が少なく、シンプルな構成です。
ボイラ負荷240T/H(溶解塩噴霧無し)
ボイラ負荷240T/H(溶解塩噴霧有り)

実機使用の例