米国KBR社と石油重質油分の改質における協業で合意 石油残渣(SDAピッチ)焚きプラントの拡販に向けて
◆ 世界で唯一、実機の運転実績を有する当社技術を海外へ展開
◆ SDA技術ライセンス世界トップシェアのKBR社とともに、製油業界に新たなソリューションを提案
三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、石油の重質油留分から溶剤脱れき(SDA:Solvent De-Asphalting(注1))法により軽質油留分を回収した石油残渣(SDAピッチ)を燃料とするSDAピッチ焚きプラントの拡販に向け、SDA技術のライセンスで世界トップシェアを持つ米国KBR社(KBR, INC.)と協業していくことで合意しました。今後は、両社の固有技術をセットで提供することにより、エネルギー回収が困難だったSDAピッチを電力あるいは蒸気として有効利用する道を拓くことで製油業界に新たなソリューションを提案していきます。
KBR社は、テキサス州ヒューストンに本社を置く総合エンジニアリング会社です。同社は、重質油に溶剤を混合して軽質油とSDAピッチを分離する高い技術を有しており、軽質油留分の抽出比率を高めるSDAプロセス技術のライセンサーで、同技術によるSDA装置を製油業界に納入しています。同装置の普及をさらに加速させていくため、SDAピッチの有効利用を実現する下流プロセス技術を保有する企業との協業を模索していました。
一方、当社が開発したSDAピッチ焚きプラントのボイラー設備は、高粘度のSDAピッチを加熱した後、新たな装置を設置することなく液体のまま燃焼可能なバーナーを搭載。また、高濃度の硫黄分や重金属に起因する腐食への対策として、燃焼部分を中心に高温腐食対策を施しています。さらに、排ガス中のNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)ならびに煤じんについては、2018年に世界トップの市場シェアを獲得した排煙脱硫装置(FGD:Flue Gas Desulfurization(注2))をはじめとする当社の先進的な総合排煙処理システム(AQCS:Air Quality Control System)により除去して環境負荷低減をはかります。
近年、欧州を中心に船舶用C重油の使用規制が強化されており、軽質な石油製品に対する需要が高まっています。これに対応して、製油所では石油製品の軽質化を促進するため、SDA装置など残油分解システムの導入を検討する動きが出てくる一方、副生物で利用用途が限定されているSDAピッチの有効活用が課題となっています。今回の両社協業は、こうした社会的要請に応えて有力ソリューションを提供するのが狙いです。
MHPSは、今回の協業を弾みにKBR社との緊密な連携により、SDAピッチ焚きプラントの普及を通じて、資源の有効利用を促進することで製油プラントの経済性を高め、社会の発展に貢献していきます。
- 1脱れきは、蒸留処理後の原油(減圧残油)からアスファルト分等(れきせい:瀝青)を分離・除去することで、そのうちSDAは溶剤混合による脱れき方法です。
- 2世界の発電事業に関する詳細な市場調査資料を提供している米国のマッコイ・パワー・レポート(McCoy Power Report)における「Technology Owner」(技術提供先を含む)の数値に基づいており、出力5,000kW以上の火力発電設備に設置されたFGDが対象となっています。
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