地熱発電をリアルタイムで見える化、パフォーマンス・収益力向上に貢献
TOMONI®
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顧客 | Geotérmica para el Desarrollo S.A.P.I. de C.V. (GEODESA) |
プラント | ドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所 |
総出力 | 2.5万kW |
国・地域 | メキシコ(ナヤリット州) |
主要サービス | インテリジェントソリューション「TOMONI®」 |
スケジュール | 2020年受注、2021年導入 |
概要
増え続ける電力需要を地熱エネルギーで応える
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メキシコは石油・天然ガス・石炭などの地下資源に恵まれ、特に石油は第二次大戦後、国の経済を支える大きな柱でした。ところが近年、石油・天然ガス・石炭ともに生産量が急速に減少しています。一方、電力需要は経済発展や人口増加とともに増え続け、過去20年間で2倍以上に。それに伴い、発電量も過去10年間で24.3%増え、電力需要は2032年まで年平均3.1%増加し続けることが予測されており、安定供給のための電源開発が急務といえます(注1)。
メキシコの電源開発の未来を考えるとき、見逃せないのが地熱発電です。環太平洋火山帯に位置するメキシコは、地熱資源量が世界第5位(注2)。地熱発電設備の容量も世界第6位(注3)で、以前から三菱重工も同国の地熱発電プロジェクトに参画し続けています。
- 1SENER [2018.6] 「PROGRAMA DE DESARROLLO DEL SISTEMA ELÉCTRICO NACIONAL:PRODESEN2018-2032」(https://www.gob.mx/cms/uploads/attachment/file/331770/PRODESEN-2018-2032-definitiva.pdf)
- 2経済産業省 [2016.6] 「地熱資源開発の現状と課題について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/018_02_00.pdf)
- 3Think Geo Energy News [2020.1] 「ThinkGeoEnergy's Top 10 Geothermal Countries 2020」(https://www.thinkgeoenergy.com/thinkgeoenergys-top-10-geothermal-countries-2020-installed-power-generationcapacity-mwe/)
メキシコ向け地熱発電設備を累計13基供給、同国の電源開発を支える
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メキシコ中西部にあり、太平洋に面して290kmを超える長い海岸線を持つナヤリット州。亜熱帯性の気候と美しいビーチ、野鳥やクジラなどの野生動物の姿、国の無形文化遺産にも登録される美食などに惹かれ、多くの観光客がナヤリットのビーチを訪れるといいます。本プロジェクトはナヤリット州の州都テピクの南およそ50kmの地にあるドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所(Domo de San Pedro Geothermal Power Station)で展開されているものです。
三菱重工は2016年に同発電所の地熱発電設備を納入。それ以前にもメキシコ連邦電力庁(Comision Federal de Electricidad:CFE)から2つの発電所向けに各6基の地熱発電プラントを受注しており、ドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所の地熱発電設備は13基目の実績に当たります。メキシコ全体での発電設備容量に占める当社のシェアは火力・地熱を併せて約40%に達しており、同国の電源開発において大きな役割を果たしているといえます。
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自然の変化に対応すべく、
インテリジェントソリューション「TOMONI®」を地熱発電所に初導入
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ドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所はメキシコの発電会社であるGrupo Dragon社傘下のGEODESA社(Geotermica para el Desarrollo S.A.P.I. de C.V.)が運営しています。Grupo Dragon社は主に再生可能エネルギー事業を行う企業で、傘下のGEODESA社は地熱発電所と太陽光発電所の開発を担当しており、ドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所はメキシコ初の民間企業による地熱発電所です。そのため、プラント業者にも高い提案力が求められていました。
三菱重工は2014年に蒸気タービンなどの主要機器および補機の設計・製作・調達・据付・土建工事・試運転などをワンストップで受注。前述のとおり、同発電所は2016年に運転を開始し、その出力は2万5,000kWに達しました。
しかしその後、生産井の経年劣化により蒸気条件が最適設計から乖離。こうした変化を監視し解決策の提案をするため、TOMONIが導入されることになりました。
導入成果
リアルタイムで24時間監視、プラントの効率と信頼性向上に貢献
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地熱発電とは、地下のマグマに熱せられた蒸気や熱水を井戸(生産井)を掘って取り出し、その蒸気を利用して蒸気タービンを動かし発電するものです。マグマの熱エネルギーをそのまま利用するため、化石燃料を使う必要がなく、CO2排出量が極めて少ないクリーンなエネルギーです。さらに同じ再生可能エネルギーでも、太陽光や風力のように天候や季節の影響を受けることがありません。設備利用率で比べると、太陽光発電は10-21%、風力発電(陸上)は23-44%の範囲といわれ、地熱発電は80%以上と高い水準にあり、ベースロード発電として期待されています(注4)。
ただし、地熱発電も生産井の状況が変化するため、計画的な発電のためには常に状態を把握する必要があります。今回のプロジェクトでは、TOMONIを通じてプラントの運転状態を24時間監視。またその運転データを分析し、パフォーマンスの改善提案を行っていきます。TOMONIによるサービスの提供を通じて地熱発電設備の運用最適化を追求することにより、発電所の経済性と信頼性を高めて顧客の収益力の向上に貢献します。
- 4IEA [2018] 「Average annual capacity factors by technology, 2018」(https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/average-annual-capacity-factors-by-technology-2018)
経済産業省 [2017.6] 「地熱資源開発の現状について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/022_04_00.pdf)
- 4IEA [2018] 「Average annual capacity factors by technology, 2018」(https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/average-annual-capacity-factors-by-technology-2018)
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ソリューション
三位一体で実現する、地熱発電のスマート化
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本プロジェクトではTOMONIにより、(1)ドモ・デ・サン・ペドロ地熱発電所(メキシコ)、(2)GEODESA社の本社(メキシコ)、(3)三菱重工のTOMONI HUB(日本/長崎)の3か所をネットワークで結び、地熱発電所を監視・支援します。
(1)の地熱発電所の稼働状況はTOMONIを介して、(2)の電力会社本社と(3)のTOMONI HUBにリアルタイムで共有されます。(3)TOMONI HUBでは三菱重工の運転保守のエキスパートが24時間365日待機し、リモートで地熱発電プラントのエンジニアリングサポートを提供していきます。長期的にプラントを監視しデータを蓄積することで、将来的には早期の対策立案および運用支援を行い、計画外停電の発生を未然に防ぐことも可能となります。
顧客・当社関係者の声
気候変動に対応し、人類の繁栄を推進するために
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GEODESA社
オペレーション責任者(注)Juan Luis Del Valle Luarca
「当社は地熱発電所建設における三菱重工の専門性に満足しており、プラント運転最適化のために導入したインテリジェントソリューションTOMONIに関する同社の専門知識についてもさらに高く評価しています。両社のチームが連携してプラント監視およびデータ分析を行い、信頼性の高いクリーンパワーをお客様に提供するためのソリューションを開発することは、当社にとって大きな支援要素となります」
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Mitsubishi Power Americas, Inc.
インテリジェントソリューション担当(注)Marco Sanchez
「地熱発電は地中の熱水に由来する蒸気でタービンを回転させ、CO2排出量がゼロであることから、エネルギーの脱炭素化に重要な役割を果たすものです。TOMONIによるソリューションを地熱発電プラント向けにカスタマイズすることは、お客様に発電・蓄電ソリューションを提供し、低コストで信頼性の高い方法で気候変動に対応し人類の繁栄を推進するという当社のミッションをさらに具現化するものになります」
- 肩書は当時のものです