急成長するジャカルタのエネルギー問題に突破口を
GTCC
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顧客 | PT. PLN (Persero) |
プラント | ムアラカラン火力発電所 |
総出力 | 50万kW |
国・地域 | インドネシア(ジャカルタ特別区) |
主要製品・サービス | M701F形ガスタービン・LTSA |
スケジュール | 2016年 受注、2021年 運転開始 |
概要
スマートに生まれ変わるASEAN最大の巨大都市
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大小1万3000以上の島々からなり、世界第4位(注1)の人口(約2億7千万人)を抱える巨大な多様性国家、インドネシア。20-30代の労働人口比率が高く、GDP成長率も5%前後を維持する、いま世界で最も勢いのある国の一つです。
その首都ジャカルタは、まさに成長と変革を続ける巨大都市。人口集中による交通インフラ不足や電力供給が大きな課題でしたが、2019年に国内初の地下鉄MRT(Mass Rapid Transit)が開通したほか、国が進める「100 Smart City計画」の一つにも位置付けられ、さまざまな都市改革が進められています。
「100 Smart City計画」とは、行政やインフラ、教育、医療などのIT化により、2045年までに国内に100のスマートシティを作り出すという大規模な国家プロジェクトです。その目的には、経済格差の是正や都市の環境保全も含まれています。活気にあふれ、東南アジアの雰囲気を携えていたインドネシアは、いま、世界に先駆けたスマートかつクリーンな国へと成長を遂げつつあるのです。- 1総務省統計局「世界の統計」2021(https://population.un.org/wpp/)
天然ガスへのシフトがエネルギー政策の鍵に
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経済発展に伴い無視できないのが、環境・エネルギー問題です。インドネシアはASEAN最大のエネルギー消費国家と言われ、一次エネルギー消費量は世界全体でも第13位(注2)。また石炭火力発電所への依存度が高く、温室効果ガスの排出量削減は急務の課題となっています。
これに対し、政府は2030年までに温室効果ガスの排出量を 29%削減し、2060年までにはネットゼロを達成する目標を掲げました。石油・ディーゼルを中心としたエネルギー構成から、CO2排出量を大幅に抑えられるガス中心への燃料転換を決定。2030年以降は、石炭火力発電所の新たな建設も禁止しています。また、米国に次ぐ世界第2位の地熱ポテンシャルを活用するなど、再生可能エネルギーの割合も段階的に増やしていく計画です。- 2BP統計より(https://www.globalnote.jp/post-3231.html)
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首都インフラを支える主要発電所にGTCC設備を新設
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2016年、三菱重工はインドネシアの国営電力会社であるPT. PLN (Persero)より、ムアラカラン火力発電所向けの天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備を受注しました。
ムアラカラン発電所はジャカルタの北西約10kmに立地し、急増する首都の電力供給を担う重要な発電所です。今回のGTCC新設はインドネシア政府が進める3,500万kWにおよぶ電源整備計画を受けたプロジェクトの一環で、都市交通機関MRTやLRT(Light Rail Transit)をはじめとする首都インフラを支える重要な取り組みです。契約締結後、2019年から建設を開始。2021年6月にすべての引き渡しが完了し、商業運転が開始されました。
導入成果
インドネシア最高水準の発電設備を通じて、同国の電力供給の安定化とCO2減に貢献
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本プロジェクトのGTCCは、既存設備に隣接して完成したもので、インドネシア最高水準の性能を有しています。GTCCは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式です。ガスタービンを使って発電した後に、ガスタービンから大気に放出される高温排ガスを熱回収し、排熱回収ボイラーに導き、その熱交換によって蒸気を発生させ蒸気タービンを使ってもう一度発電させます。2回発電を行うことにより、発電効率が高く、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)の排出量を削減することができます。
三菱重工は、インドネシア市場向けに1971年に蒸気タービンを初めて出荷して以来、現在までおよそ50年にわたり緊密な関係を築いており、当社の納入設備の総発電能力は12GWに達しています。今回採用したM701F形ガスタービンは、2006年に2基をチレゴンGTCC発電所へ初めて納入して以来、2011年にムアラカラン発電所、2012年にタンジュンプリオク発電所、そして2018年に“Jawa-2プロジェクト”にそれぞれ2基納入した実績があります。当社はインドネシアにおいて、GTCC発電設備を含めた大型ガスタービンのシェアでトップを誇り(注3)、その信頼も今回の受注の一因となりました。今後も同国の首都を中心とする西ジャワ地域一帯の電力供給の安定化や発電の効率化を支援することにより、脱炭素化の推進や持続可能性の高いエネルギー創出に貢献していきます。
- 32019年6月時点
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ソリューション
コロナ禍の活動制限を克服し、納期を1ヵ月以上前倒しして契約達成
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今回のプロジェクトで、三菱重工はGTCC発電設備の主要機器となるM701F形ガスタービン1基、蒸気タービン1基および付帯設備一式を供給。発電機は三菱電機株式会社製を採用し、土建工事および据付工事はインドネシア国営土建会社であるPT. Wijaya Karya (Persero) Tbk.が担当しました。当社からは日本人社員と現地社員を中心に総勢約60名が参加し、工事従業者を含めると約1350名が携わった大規模な工事となり、新型コロナウィルス感染拡大による活動制限があったにも関わらず、計画を上回るペースで順調に進行。納期を1か月以上前倒しして契約を達成しました。当社では、遠隔監視や常駐技師の派遣を通じて、商業運転でのGTCC発電設備の保守・管理を支援しています。
顧客・当社関係者の声
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PLN社 ジャワ島及び東部諸島発送電建設本部長
Mrs. Ratnasari Sjamsuddin
「ムアラカラン発電所は、インドネシアの首都圏に電力供給を行う重要な発電所です。コロナ禍におけるさまざまな活動制限があったなか、予定より1ヵ月早く商業運転開始を達成した三菱重工グループの貢献に心から感謝します。」
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三菱重工グループ現地法人PT. Mitsubishi Power Indonesia社長
石倉 一樹
「インドネシアでは、インフラ整備、経済発展と同時に環境対策も優先すべき課題となっており、安定的かつ環境に配慮した電力供給へのニーズが高まっています。従来の石炭火力発電所に比べCO2排出量が大幅に削減となるインドネシア最高効率のガスタービンを通して、同国の電力供給の強化と持続可能な発展を支えていきます。」