排ガスから電力をつくる、中国の鉄鋼業界の脱炭素化を推進

排ガスから電力をつくる、中国の鉄鋼業界の脱炭素化を推進
排ガスから電力をつくる、中国の鉄鋼業界の脱炭素化を推進
2021-06-25
GTCC(高炉ガス焚き) ※画像はCGイメージです(実際のプラントとは異なります)
※画像はCGイメージです(実際のプラントとは異なります)

GTCC(高炉ガス焚き)
 

顧客 江蘇沙鋼集団
総出力 18万kW
国・地域 中国(江蘇省蘇州市張家港市)
主要製品 M701SDAX形ガスタービン
スケジュール 2021年受注、2023年運転開始

概要


観光都市からハイテク都市へと進化した中国・蘇州

  • 観光都市からハイテク都市へと進化した中国・蘇州
  • 上海から北西へ約100kmの場所に位置する江蘇省蘇州市。古くから運河が発達し、旧市街には情緒あふれる街並みが残ることから「東洋のヴェニス」とも称えられる町です。その蘇州市内に1994年よりシンガポールとの協力事業の開発区「蘇州工業園区」が生まれ、韓国・サムスン電子、ドイツ・シーメンス社、オランダ・フィリップス社などを誘致。世界的企業が製品の生産・輸出拠点を置くようになり、持続可能なハイテク都市として多くの最先端事業が展開された結果、今や近未来都市とも呼べる発展を遂げています。

    2020年、全世界がCOVID-19のパンデミックに覆われる中、中国はいち早く経済成長率をプラスに転じさせ、GDP規模1兆ドル以上の国の中では飛び抜けて高い+2.3%を記録しました(注1)。 蘇州のGDP成長率はこれを上回る+3.4%、都市別のGDP規模で見ても国内第6位となっています(注2)

    • 1JETRO [2021.1] 「2020年の実質GDP成長率は2.3%、輸出と投資が牽引」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/01/e64a1ecf01af7904.html)
    • 2第一財経 [2021.3] 「2020年GDP十强地级市:苏州一骑绝尘,五城过万亿」(https://www.yicai.com/news/100989791.html)

高まる鉄の需要と、求められる脱炭素化

  • 中国、そして蘇州の経済成長を支えている産業のひとつが鉄鋼業です。現代社会で鉄は大量に使われる素材の代表格。新興国の経済発展とともに世界の粗鋼生産量は2000年の約9億トンから2020年の約19億トンへと、20年で2倍以上に急増しました(注3)。鉄の重要性は今後も変わらないと考えられますが、一方で鉄鋼業はCO2排出量が非常に大きい産業でもあります。というのも、製鉄の過程で石炭を蒸し焼きにしたコークスという多孔質の材料を使う必要があり、製鉄そのものだけでなくコークスの製造にも大量の発熱量と電力消費があり、膨大な量のCO2排出へとつながるからです。実際、世界のCO2排出量を産業部門別に見ると、製造業が全体の18%を占め、その中でもっともCO2を排出している産業が鉄鋼業です(注4)

    2020年時点では、世界の粗鋼生産量に占める中国企業のシェアは56%に及び、企業別でも世界トップ10社のうち7社を中国企業が占めています(注5)。そんな中、2020年9月に習近平国家主席が国連総会に出席し、2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを目指すことを発表。鉄鋼業界も過剰生産能力の解消と生産方式の見直しを進め、CO2排出量削減のために全生産能力の80%に当たる生産設備を2025年までに更新させる方向に動いています(注6)

    • 3熊谷章太郎[2021]「脱炭素社会への移行が迫るアジアの鉄鋼業の将来」日本総合研究所『環太平洋ビジネス情報 RIM』2021 Vol.21 No.83(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/12969.pdf)
    • 4注3に同じ
    • 5注3に同じ
    • 6中国日本商会 [2021.6] 「中国経済と日本企業 2021年白書 中国经济与日本企业2021年白皮书」(https://www.jpcic-sh.org/uploads/mail_attachment/1623920896.pdf)
  • 高まる鉄の需要と、求められる脱炭素化

世界シェアNo.1の高炉ガス焚きGTCC発電システムで、環境への要求に応える

蘇州市には中国の大手製鉄企業グループのひとつであり、世界第4位(2020年)の粗鋼生産量を誇る江蘇沙鋼グループが本拠を置いています。2021年6月、三菱重工は同社より18万kW級の高炉ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備を受注。2023年の運転開始を予定しています。

製鉄のプロセスでは、コークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)、転炉ガス(LDG)などのガスが副次的に大量発生し、これらを総称して「副生ガス」といいます。この副生ガスを有効活用するために、半世紀以上前から高効率で大容量の製鉄所副生ガス焚きコンバインドサイクル(GTCC)の技術開発が進められてきました。ただし、副生ガスは天然ガスと比べて10分の1程度の低カロリーで燃焼性が低いこと、燃料供給ガス圧力が低いこと、燃料中に不純物が多いことなどから、解決すべき課題が数多くありました。

  • 世界シェアNo.1の高炉ガス焚きGTCC発電システムで、環境への要求に応える
  • 三菱重工では、国内外のお客様のご要望を受けながらGTCCの改良を続け、1980年代に専用の燃焼器を開発するなどして、独自の高炉ガス焚きGTCC発電技術を確立。現在では高炉ガス焚きGTCC発電システムでは世界シェアが6割を超え、世界トップの実績を誇っています。
    江蘇沙鋼グループには2006年の初号機運転開始を皮切りに、高炉ガス焚きGTCC発電設備(5万kW級)を計4基納入しており、その実績と高い技術力を評価されて、今回の受注に至りました。
    また、当社は高炉ガス焚きなどの低カロリーガス焚きガスタービンを製鉄所などに総計74台、プラント出力合計866.2万kWにも及ぶ納入実績を有しており、累計運転時間は454万時間以上に達しています(2021年10月時点)。

導入成果例


排ガスをエネルギーとして有効利用、環境にやさしい製鉄所へ

  • 従来は、副生ガスを大気中へ放散したり、ボイラー焚きの燃料として副生ガスを使用し、その蒸気で蒸気タービンを駆動させて発電するスチームパワープラントでした。ところが、副生ガスは前述のとおり低カロリーのため、プラント効率が低く、CO2も多く排出していました。
    その点、副生ガス焚きGTCC発電設備を導入すると副生ガスの大気中への放散を抑え、CO2排出量を大幅に削減できます。さらに副生ガスを利用した発電は熱効率が高く、発電端出力も大幅に増加させます。大気汚染物質のひとつである窒素酸化物の排出値についても、ガスタービン出口・煙突入口のいずれでも低く抑えられていることが確認されています。

  • 排ガスをエネルギーとして有効利用、環境にやさしい製鉄所へ

ソリューション


世界で唯一、ガスタービンの研究開発、設計、製造、実証を同一敷地内で行う高砂製作所

  • 世界で唯一、ガスタービンの研究開発、設計、製造、実証を同一敷地内で行う高砂製作所
    高砂製作所
  • 今回受注した高炉ガス焚きGTCC発電設備は、ガスタービン、排熱回収ボイラー、蒸気タービン、発電機、ガスコンプレッサー、各種補機などで構成されています。三菱重工はこのうち、主要機器であるM701SDAX形ガスタービンを高砂製作所(兵庫県高砂市)で製作。関連装置・補機類も供給します。高砂製作所は半世紀以上にわたるタービン生産の歴史があり、なかでも発電用ガスタービンの分野では世界最高クラスの熱効率を誇る高性能ガスタービンの製作を得意としています。世界最先端の技術を駆使した研究開発と設計、自社工場内での製品製作、そして世界最大級のタービン試験設備による実証により、高品質・高信頼性の確保に向けた生産体制を整えています。蒸気タービンや発電機は、協業関係にある現地重電機器メーカーの東方電気集団(Dongfang Electric Corporation)が担当します。

当社担当者の声


革新な技術とソリューションで、製鉄業界のCO2削減に貢献

  • 三菱重工業株式会社 エナジードメイン エナジートランジション&パワー事業本部 海外営業部 アジア第二グループ 上席主席 田中 僚
  • 三菱重工業株式会社
    エナジードメイン エナジートランジション&パワー事業本部
    海外営業部 アジア第二グループ 主席

    田中 僚

    「世界的な環境負荷低減の動きのなかで、製鉄業界でもCO2排出量の削減が強く求められています。製鉄所から発生する副生ガスを高効率で活用する高炉ガス焚きGTCCは、環境への負荷低減に力を発揮するだけでなく、エネルギーの有効利用にも大きく貢献します。当社は、今後もこの分野で先駆的な役割を果たすため、高炉ガス焚きGTCC発電設備の提案によるソリューション活動を積極的に展開し、エネルギーの有効利用と環境負荷低減による持続可能な脱炭素社会の実現に貢献するとともに、多様なグローバル社会の課題解決に取り組んでいきます。」

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プレスリリース