技術情報
三菱重工は、高い信頼性と高効率を実現する独自の蒸気タービン技術を保有しています。
高性能翼
完全三次元設計により翼形状を最適化するなど、様々な技術を組み合わせて二次流れ損失・摩擦損失を低減するとともに、最適なフローパスによりタービン性能の向上を実現します。
低圧側に用いられる長翼には、Integral Shroud Blade(ISB)/Continuous Cover Blade(CCB)翼を採用しています。ISB/CCBは翼根部(ルート)、プロファイル部、翼頂部(シュラウド)が一体形成されたデザインで、高度な組立作業を必要とせず、また運転中に互いの翼が接触することで耐振強度の大幅な向上と翼頂部のリーク低減により、飛躍的な性能・信頼性向上をはかったものです。
溶接ローター
溶接ローターは、使用温度に合わせて軸端部、高温部(高クリープ強度材)、低温部(高靱性材)および軸端部を溶接構造で一体としたローターです。高低圧一体タービンのみならず、将来の700℃級タービンに非常に有用な技術です。当社は、極めて信頼性の高い溶接技術を有し、これまで数多くの納入実績と開発の歴史を有しています。
シール技術
当社は、アブレイダブルシール、リーフシール、ACC(Active Clearance Control)シールなど、常に最先端技術を設計条件に合わせて最適な組み合わせで適用し、回転部と静止部間の間隙を最小にすることでタービン内部からの蒸気の漏洩損失を抑え、高効率化を実現しています。
高温化技術
当社は、発電効率を向上させるために蒸気条件の高温化を進めています。
開発した高温化材料は、ローター、車室、弁などの用途に合わせて適用しており、多くの納入実績と開発の歴史を有します。
600/620℃の蒸気温度までの運転実績を有するなど、これまでも当社は世界トップクラスの高温化技術開発を進めてきましたが、現在も次世代タービンの700℃級A-USC(Advanced Ultra Super Critical)蒸気タービンの実現に向け、高い高温強度を有するNi基合金の開発およびNi基合金の溶接ローターの開発に取り組んでいます。
A-USC蒸気タービンは、600℃級USC技術をベースとして、蒸気温度を700℃以上まで高めた二段再熱タービンを採用することにより、送電端効率(HHV)46%以上を目指しています。またA-USCの開発で培った技術は、GTCCボトミングサイクルの高温化・高効率化にも活用していきます。
排気方向と配列
当社は、建設現地の敷地条件などの制約条件やお客様の様々なご要望にお応えし、最適なタービン配置をご提案します。
タービンの排気方向は、下方排気、軸流排気、横向き排気および上向き排気(注1)に対応可能です。
またGTCCにおいては、多軸と一軸(C-G-S配置(注2)、C-S-G配置(注3))どちらにも対応しています。
C-G-S配置では、発電機と蒸気タービンとの間に結合・切り離しが可能なクラッチ(嵌脱クラッチ)を設けることで、起動時の補助ボイラ容量を抑えることが可能です。
- 上向き排気は、地熱発電プラント等の中小型タービンにて対応可能
- C-G-S配置 : ガスタービン(C) - 発電機(G) - 蒸気タービン(S) の配置
- C-S-G配置 : ガスタービン(C) - 蒸気タービン(S) - 発電機(G) の配置
社内試験設備
蒸気タービンの実機検証試験設備(フルスケール/縮小スケール低圧ローター試験設備や高速バランス試験設備、GTCC実証発電設備など)を自社工場内に保有しており、開発した最新技術を実機にて検証しています。検証試験にて得られた結果を製品に反映することで、確かな品質と信頼性を兼ね備えた製品を提供しています。
運用性
完全変圧運転や複合変圧運転への対応をはじめ、設備運用に関するお客様のあらゆるニーズにお応えします。
また、当社では、運用可能最低負荷の切下げ、起動時間短縮、負荷変化率向上の検討・検証を行い、お客様のご要望に応じて最適な運用をご提案します。
納入したタービンはお客様の要望に応じて運転状況を24時間遠隔監視も可能であり、運転中のトラブルにも即座に対応が可能です。
また次世代技術として、IoT技術の活用により機器の運転状態を遠隔・自動監視し、ここから得られたデータを分析して異常を早期発見・把握する取り組みも進めています。これらの分析は、定期検査インターバルの延長にも活用され、お客様設備の稼働率向上に貢献します。