石炭から天然ガスへ、持続可能な発電モデルを構築
GTCC
|
|
---|---|
顧客 | Capital Power Corporation |
プラント | ジェネシー発電所1、2号機 |
総出力 | 136万kW |
国・地域 | カナダ(アルバータ州) |
主要製品 | M501JAC形ガスタービン |
スケジュール | 2020年 受注 2024年 1、2号機運転開始 |
概要
豊かな天然資源と都市が共存するカナダ・アルバータ州
-
-
カナダ西部・ロッキー山脈の東側に広がるアルバータ州は、美しい森と湖や広大な大平原など多彩な自然に恵まれた地方です。バンフ国立公園やジャスパー国立公園をはじめ、州内だけで6つのユネスコ世界遺産があり、世界的に知られる観光スポットも多く、その美しい景観で人々を魅了し続けています。
アルバータ州の面積は約66万m²。フランスの国土面積とほぼ同じ広さに、約400万人の人々が暮らしています。また、同州は天然資源が豊富なカナダ国内でも最も石油や天然ガスの産出量が多く、地下資源が豊かな州でもあります。州都エドモントンはカナダ西部の交通の要衝に当たり、国内各地のエネルギー産業の要となる都市です。1947年に巨大な油田が発見されて以来、都市部も急速な発展を遂げ、州の経済の柱となっています。
産油州だからこそ、脱炭素化を推進
-
カナダは電力の約8割をゼロ・エミッション電源(注1)でまかなうエネルギー先進国です。なかでも水力発電が発電量全体の約6割を占めており、広大な土地に川や湖が豊富に存在する国土を十二分に活かし安価な電気料金を実現しています。一人あたりの電力消費量も米国や韓国・日本を大きく引き離し、世界トップの多さとなっています。
一方、アルバータ州は国内最大の産油地ですが、「エネルギー産業が州の経済を支えているからこそ、積極的に気候変動対策を行う」と州政府が宣言。段階的に地球温暖化ガス排出量規制を実施し、2019年からは「技術革新および排出削減規制(TIER:Technology Innovation and Emissions Reduction regulation)」を始め、現在に至っています(注2)。また、2015年には同州内で稼働するすべての石炭火力発電所に対し、2030年までの運転停止か、天然ガス火力発電所への転換を義務化しました(注3)。- 1原子力発電や太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーに基づく電源
- 2Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.
- 3Government of Alberta "Phasing out emissions from Coal" (https://www.alberta.ca/climate-coal-electricity.aspx)
-
リパワリングで発電出力70%向上、カナダで最も効率的な天然ガス焚きGTCC発電設備へ
-
-
2020年12月、三菱重工はカナダの発電会社であるキャピタル・パワー社(Capital Power)が所有するジェネシー発電所に向けて、M501JAC形ガスタービン2基を受注しました。
今般の受注内容は、1994年設置の1号機と1989年設置の2号機の更新です。既存の蒸気タービン発電機にクラス最高レベルである当社製ガスタービンと排熱回収ボイラーを組み合わせることで、発電効率が64%を超えるカナダで最も効率的な天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電プラントとなります。今回の設備更新の結果、発電出力は2機合わせて80万kWから136万kWへと増加(2021年1月時点)。1、2号機ともに2024年に稼働を開始する予定で、大容量かつ高効率な発電設備として、地域の電力需要に応えていくことが期待されています。
導入成果
年間340万トンのCO2削減、ネットゼロ実現を見据えた発電技術
-
当社ガスタービンへの転換はアルバータ州のエネルギー事情に大きなメリットをもたらす見込みです。まずGTCC方式の導入により、旧来の石炭燃料よりもCO2排出量を大幅に削減できる天然ガス燃料への転換が可能になりました。年間340万トンのCO2排出が削減され、TIERの基準もクリアします。(1、2号機が石炭を燃料としていた時に比べて約60%削減)
また、キャピタル・パワー社は北米向けに2022年末までに太陽エネルギーと風力エネルギーを約26万kW追加する計画を進めています。しかし、再生可能エネルギーはどうしても季節や天候に左右される一面があり、電力の安定供給を実現するには高効率で安定的な電源が不可欠です。M501JAC形ガスタービンはクラス最高の空気冷却方式を採用しているため、従来に比べて起動時間が短縮され、再生可能エネルギーとのバランスを取りながら柔軟で信頼性の高い電力供給が可能です。キャピタル・パワー社はさらなるCO2排出量を削減するために、当社のCO2回収システムも採用予定です。GTCC発電設備・CO2回収技術の両面から、顧客の脱炭素化を支援しています。
-
ソリューション
既存設備を有効活用し、最新設備へアップグレード
-
-
今般はリパワリング案件のため、当社が提供するのはM501JAC形ガスタービン2基と発電機2基、排熱回収ボイラー2基。蒸気タービンは既設のものを換装し有効活用します。
ガスタービンの主要部品は1962年の操業開始以来、世界最高クラスの熱効率を誇る高性能ガスタービンなどを製作し続ける日本の高砂製作所で製作します。本体の組立は、現地窓口である三菱パワー・アメリカ(Mitsubishi PowerAmericas, Inc.)のジョージア州・サバンナ工場で行います。
クライアントの声
2050年カーボンニュートラル実現に向けて大きく前進
-
-
キャピタル・パワー社 社長兼CEO
Brian Vaasjo
「当社は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に、低炭素の未来に向けた戦略を進めています。三菱重工の発電技術を用いたジェネシー発電所1、2号機では、石炭からの燃料転換により年間340万トンのCO2排出が削減されます。またCO2回収技術を導入することで、未来へのさらなる炭素排出削減に向けた重要な位置づけとなるでしょう」