プレスリリース

木質系バイオマスから製造した持続可能な代替航空燃料を定期便に供給 三菱パワーは噴流床ガス化技術で航空分野の脱炭素化に貢献

◆ NEDOの委託のもと、JERA、TOYO、JAXAとの4事業者共同により燃料の一貫生産技術を確立
◆ 持続可能な代替航空燃料の社会普及を進め、2050年カーボンニュートラルに貢献

三菱パワーは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオジェット燃料生産技術開発事業」による委託を受けて4事業者共同で取り組む木質系バイオマスを原料とした燃料生産技術の開発を実施してきており、このほど完成したバイオジェット燃料が、持続可能な代替航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF)として、世界で初めて航空定期便に供給されました。この燃料は、ガス化した木質セルロースから液体燃料を合成するガス化FT合成技術により生産したもので、SAFの国際規格である「ASTM D7566」(注1)への適合が確認されています。

この燃料生産技術の開発は、共同4事業者のうち株式会社JERAの新名古屋火力発電所(名古屋市港区)構内に建設したパイロットプラントで原料に木くずを使用し、SAFを一貫生産する実証試験を通じて行われました。JERAが原料調達とパイロットプラントの運転、三菱パワーが噴流床ガス化技術(注2)を用いて原料をガス化、東洋エンジニアリング株式会社(TOYO)が生成ガスからの液体燃料合成・蒸留と石油系ジェット燃料との混合以後のサプライチェーン構築を担当し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が製造されたSAFの燃焼における性能特性評価試験を実施するなど、各事業者の技術・ノウハウを結集したものです。

三菱パワーは、1980年代から石炭やバイオマスなどの燃料ガス化について研究開発を重ね、高性能なガス化炉技術を確立しています。これまでの石炭やバイオマスなどの燃料ガス化のノウハウを活かしつつ、今回のプロジェクトでは中核となる常圧酸素/水蒸気吹き噴流床ガス化技術により、液体燃料合成に好適なガスを長期にわたり安定的かつ効率的に供給できることを実証しました。この設備は粉砕が難しく幅広い粒径分布を有するバイオマス利用にも対応したガス化炉を採用し、なおかつ流動層ガス化炉等の他方式と比べて安定した組成のガスをFT合成装置(注3)に供給することを実現したもので、本技術により大容量かつ安定したガス生成が可能となります。

国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は、温室効果ガスの排出量削減による地球温暖化抑止対策を共通のテーマとして掲げています。特に、SAFの導入は有効な手段の一つとして位置づけられており、今後想定されるSAFの本格普及に向けて各事業者と安定的かつ効率的な供給に取り組むことで、世界規模で行われる航空分野での温室効果ガス低減に向けた道筋をつけるものです。

三菱パワーは今後も、バイオジェット燃料生産技術の確立に向けた取り組みを推進し、航空分野における脱炭素化を実現することで、地球環境の負荷低減に貢献していきます。

【木くず由来SAFによる国内線定期便の概要】

  • 日付:2021年6月17日
  • 便名:日本航空515便
  • 区間:東京国際空港から新千歳空港
  • 機材:エアバスA350-900
  • 1木くずから製造された純バイオジェット燃料を既存の化石燃料(JET A-1)と混合したSAFは、2021年3月に国際規格である「ASTM D7566 Annex1」に適合することが確認されました。
  • 2特殊な円筒形状炉の炉底から酸素と水蒸気を噴き上げることにより、バイオマスの均等・高効率なガス化ができる技術です。
  • 3FT(Fischer-Tropsch)合成とは、一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する方法です。

以上