エナジートランジション
エナジートランジション、
脱炭素化の3つの道筋
世界は、地球温暖化などの影響で深刻化する気候変動への対応を迫られています。
その一方で、AI の急速な進展によるデータセンターや半導体工場の新設や、輸送分野の電化の加速を背景に、世界的な電力需要の増加が予測されています。同時に、エネルギー危機や特定国へのサプライチェーン依存によるリスクの高まりにより、エネルギー安全保障の重要性が再確認されています。
エネルギーの安定供給と脱炭素化をどのように両立させるのか。
その答えは一つではなく、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、特定の電源や燃料等に過度に依存しないバランスの取れた電源構成の実現が望まれます。
三菱重工グループは、既存インフラを活かしながら段階的に脱炭素化を進める「現実的なエナジートランジション」という考え方のもと、発電分野において世界の最前線で新たな技術に挑み続け、革新的な製品・サービスを生み出してきました。
その積み重ねを力に、世界中のパートナーとともに、
カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
火力発電の脱炭素化を実現する3つのアプローチ
三菱重工は、既存インフラを活かしながら脱炭素化を進めるために、複数の道筋を用意しています。
お客さまの設備や燃料の条件に応じて、CO₂を「減らす」「回収する」「出さない」の3つのアプローチを組み合わせ、エナジートランジションの現実的なソリューションを提供します。
CO₂を減らす
火力発電の脱炭素化を実現する第一のアプローチは、既存インフラを活かしながら、発電効率の向上と燃料の低炭素化によってCO₂排出量を削減することです。
老朽化した火力発電設備を高効率なガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)へ更新することで、同じ発電量をより少ない燃料で賄い、CO₂排出量を削減できます。特に世界最高水準の効率を誇る最新鋭JAC形ガスタービンによるGTCCは、従来の石炭火力と比較してCO₂排出量を約65%削減することが可能です。
また、石炭火力の燃料にアンモニアやバイオマスを混ぜて使用することで、既設設備の段階的な低炭素化を実現できます。
CO₂を回収する
「CO₂を回収する」アプローチでは、ガスタービンや石炭火力発電所の排ガスからCO₂を分離・回収し、地下に貯留することにより、排出量の大幅な削減が可能となります。
三菱重工グループは、独自のCO₂回収技術を有し、発電プラントをはじめとする多様な排出源から、高効率でCO₂を回収するシステムで世界トップシェアを誇ります。この技術は排出されるCO₂の90%以上を回収することができるため、GTCC発電システムと組み合わせることにより、発電プラントの排出量削減に貢献できます。
CO₂回収の実装には、法整備と規制の枠組みの構築が重要であり、各国・地域の動向や、輸送・貯留インフラの整備状況を見極めながら、エナジートランジションの移行期において、現実的に脱炭素化を進める選択肢を提供します。
CO₂を出さない
「CO₂を出さない」アプローチでは、ガスタービンの燃料を天然ガスから水素やアンモニアへと転換することで、発電時のCO₂排出をなくすことを目指します。既存のガスタービンの燃焼器と燃料系統のみを交換することにより燃料を切り替えられるため、投資を抑制することができることが特徴です。
三菱重工は、2010年代の半ばから、水素を燃料として利用する大容量・高効率ガスタービンの開発を始め、近年は実証検証の段階に進んできました。将来、水素社会が到来した時、当社のガスタービンを有効活用できるよう、着実に技術開発を進めています。

エナジートランジションを推進する開発拠点
三菱重工は、脱炭素技術を研究に留めず、社会実装まで加速するための開発体制を国内に構築しています。
長崎で要素技術を磨き、高砂で実運用条件下の統合検証を重ねることで、エナジートランジションに必要な信頼性と実証データを蓄積しています。
世界初の水素製造・発電実証設備
「高砂水素パーク」
2023年、当社のガスタービンの研究開発・設計・製造・実証拠点である高砂製作所に、水素の製造から発電までを、世界で初めて一貫して検証できる「高砂水素パーク」を本格稼働させました。
高砂水素パークでは、技術検証を通して製品の信頼性向上を図るとともに、水素発電・製造技術の社会実装に貢献することを主眼にしています。水素製造・貯蔵・利用(発電)の3エリアを整備し、各種検証を行っています。

脱炭素化技術開発の中心拠点
「長崎カーボンニュートラルパーク」
長崎カーボンニュートラルパークは、エネルギー脱炭素化に向けた要素技術を開発する中核拠点として、2023年に長崎造船所および総合研究所長崎地区内で運用を開始しました。
高砂水素パークで実証する水素製造技術のほかに、アンモニア燃焼、CO₂回収、バイオマス合成燃料製造に関する要素技術の研究開発を行っています。長年にわたり培ってきた各種熱エネルギー機器の設計・製造の機能を活用しつつ、製品化や事業化を加速していきます。

脱炭素社会の達成を目指す"高砂水素パーク""長崎カーボンニュートラルパーク"の取組み
高砂水素パークと長崎カーボンニュートラルパークの役割、ならびに両拠点で進む脱炭素技術開発の全体像を、技術的観点から解説します
三菱重工の挑戦と成果
私たちは、既存インフラを活かしながら脱炭素化を段階的に進めることに挑戦しています。
実証設備での検証から、商用設備・大規模プロジェクトでの導入まで、カーボンニュートラル社会の実現に向けた主な取り組みと成果を紹介します。
電力網に接続された最新鋭大型ガスタービンでの水素混焼30%に成功
日本|第二T地点
2023年、高砂水素パーク内の地域の電力網に接続されたガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)実証発電設備(第二T地点、定格出力56.6万kW)において、最新鋭のM501JAC形ガスタービンを用いて、天然ガスに水素を30%(体積比)混ぜた混合燃料による実証運転に成功しました。
この実証では、部分負荷からフル負荷まで安定した燃焼と低NOx性能、運転中に天然ガスから水素混合燃料への切り替えが可能であることを確認しました。この成果は、発電の脱炭素化に向けた現実的な選択肢としての水素混焼技術の前進を象徴するものです。
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水素30%混焼から開始し2045年までに100%専焼を計画する
先進クリーンエネルギー貯蔵プロジェクト
アメリカ|Advanced Clean Energy Storageプロジェクト

Advanced Clean Energy Storageプロジェクトは、風力・太陽光などの再生可能エネルギーで水の電気分解を行い、製造されたクリーン水素を巨大な岩塩空洞に貯蔵し、必要な時に水素を供給し発電するものです。当社が供給する最新の84万Kw級GTCC発電プラントにおいて、30%のクリーン水素混焼から始め、段階的に水素の割合を上げ、2045年までにグリーン水素100%運転を達成する計画です。
当社が進めるエナジートランジション戦略の先駆けとなるこのプロジェクトは、水素を「作る」「貯める」「運ぶ」「使う」というバリューチェーンの構築を、米国において大規模に実施する事例となります。三菱重工グループは、今回の取り組みから得られる技術・ノウハウを活かし、今後も日本を含む世界の脱炭素化に貢献していきます。
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大型ガスタービン商用機で、水素50%混焼実証に成功
アメリカ|マクドノフ・アトキンソン発電所
三菱重工は、米国ジョージア・パワーとともに、マクドノフ・アトキンソン発電所のM501GAC形天然ガス焚きガスタービンで、部分負荷および全負荷の条件下において、水素を50%混合した燃料による燃焼実証試験に成功しました。
この実証成功は、高効率・大型のガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備によるものとしては世界最大規模。水素50%混焼により、CO₂排出量は天然ガス100%焚きに比べ約22%削減されます。


