安定運用を支える燃焼器技術
燃焼振動の抑制(その1)
発電用に使用されるガスタービンは、主に天然ガスを燃料としていますが、高効率運用のための高温燃焼のもとでは、供給燃料(成分)を変えた場合の最大の問題は「燃焼振動」の発生です。燃焼振動は、燃焼器内部で発生する圧力変動であり、過大な燃焼振動は、燃焼器やタービン部品の損傷を招く要因となります。
この燃焼振動の発生時の対処を行ったり、燃焼振動の影響を受けないよう運転調整を行うシステムが「CPFM」です。
CPFM(Combustion Pressure Fluctuation Monitoring) は、燃焼器に取り付けたセンサにより燃焼振動を常時監視し、燃焼振動発生時に負荷降下や非常停止などの処置を行うことによって機器の損傷を避けるシステムです。
また、燃焼振動発生時の負荷降下や非常停止による負荷変動を最小限とするため、自動的に運転パラメータを調整して燃焼振動の発生を抑え、常に安定燃焼状態での運転を可能とするA-CPFM(Advanced Combustion Pressure Fluctuation Monitoring)もすでに実用化されています。
燃焼振動の抑制(その2)
燃焼器の構造的な改良による燃焼振動への対応も行っています。
- 音響ライナーを設け500Hz~5,000Hz 領域の燃焼振動を抑制しています
- 保炎器の改良により循環流温度を上昇させて保炎性を改善しています
1.音響ライナー
2.保炎器
低カロリーガス燃料
低カロリーガスの代表として、製鉄所から発生する高炉ガス(BFG)、コークス炉ガス(COG)、転炉ガス(LDG)などと呼ばれる副生ガスがあります。
これらの製鉄所副生ガスを利用した高効率コンバインドサイクルプラントも多数納入しており、その世界シェアは約70%(出力ベース)に達しています。
- BFG(Blast furnace gas:高炉ガス)
- COG(Coke oven gas:コークス炉ガス)
- LDG(Linz-Donawitz converter gas:転炉ガス)
- LPG(Liquefied Petroleum gas:液化石油ガス)
- B-B gas (Butane butylene gas:ブタンブチレンガス)
低カロリーガス燃料に対応した燃焼器
低カロリーガスは、発熱量が低く燃焼性が悪いため、天然ガスと同じ構造の燃焼器では安定した燃焼が困難となります。低カロリーガスの特性・特徴に対しそれぞれ最適な燃焼器技術を適用し対応しています。
特徴 | 配慮項目 | 対応技術 |
---|---|---|
燃焼範囲が狭い | 燃焼領域の空気比制御 | 空気バイパス弁の適用 |
燃焼速度が遅い | 燃焼領域の流速低減 | 燃焼器径の拡大 |
多量の燃焼空気を必要とする | 冷却空気量の低減 | 高効率の冷却方式の適用 |
多量の燃料流量を必要とする | ノズル部圧損の低減 | スワラー式ノズルの適用 |
燃焼範囲が狭いことへの対応
低カロリーガスは、燃焼安定範囲が狭いために天然ガスと同じ燃焼器では火炎の喪失が起こり、エネルギーの安定供給ができません。そこで、燃焼領域での燃料と空気の割合(燃空比)を適正化することが必要となります。
三菱重工では、これを解決するため、燃焼器の尾筒に空気バイパス弁機構を設け、燃焼領域にある内筒の燃空比を適正化しています。バイパス弁機構がないと、燃焼領域の燃空比が低い低負荷時には燃焼効率が低下し、燃焼性が悪化してしまいます。バイパス弁機構を設けることで、低負荷時にこれを開方向に設定し、燃空比を適正に調整することにより、燃焼効率の改善を図ります。
燃焼速度が遅いことへの対応
低カロリーガスは燃焼速度が遅いため、天然ガスと同じ燃焼器では、燃焼の不安定や燃焼器内での燃焼が完了しない状態になることが懸念されます。
このため、燃焼器内筒の内径を拡大し、内筒内の空気流速を低下させることで火炎の安定、滞留時間の確保を行っています。
多量の燃焼空気を必要とすることへの対応
低カロリーガス焚きでは、天然ガス焚きに比べ燃料ガスの発熱量が低いため、必要とする燃料量が多くなり、その一方で空気流量は少なくなってしまいます。
このため、燃焼器壁面の冷却には、「プレートフィン」や「MTフィン」と呼ばれる当社独自の高効率冷却構造を採用し、冷却空気量を最小限に抑えています。
多量の燃料流量を必要とすることへの対応
高炉ガスは、燃料カロリーが低いことから、通常の天然ガスの約10 倍もの燃料流量が必要となります。このため、天然ガス焚き燃焼器のような単孔式のノズルではノズル部の圧力損失が大きくなりすぎます。この圧力損失の上昇を防ぐため、高炉ガス焚き機ではノズル圧損の低いスワラー式ノズルを採用しています。